「鳶尾山(とびおさん)」には、日本最古の三角点のひとつとして一等三角点が設置されています。この三角点というのは、四角柱に加工された石材で造られた杭状の標識のことで、山の頂上などに設置されることが多く、三角測量という測量を行う際に使う重要な基準点となる標識です。現在は日本全国に10万点ほど設置されています。
その日本全国に広がった三角測量の礎は、まず初めに三角測量を行う三角形の底辺として1882年に「相模野基線」という基準となる線が設置され実測されました。この相模野基線から「鳶尾山」を頂点とする三角形と長津田村の「高尾山」を頂点とする三角形が作られ、さらにこれを基準として大きな三角形を作るという事を繰り返し、三角測量のエリアを広げ整備していったのです。
そんな歴史的な三角点の設置された「鳶尾山」へ登ってきました。登るといっても稜線上の「やなみ峠」という峠まで道路が通ていて、三角点までは15分程度でたどり着いてしまいます。
「やなみ峠」は厚木市にある「まつかげ台」と、愛川町にある「八菅山いこいの森」を繋ぐ峠道の最高地点に位置しています。その「やなみ峠」から南東方向へ登って行くハイキングコースの途中に、めざす「鳶尾山」があります。
ハイキングコースの途中からは相模原方面の視界が開ける所があり、山桜の名所がありました。春先にはいいお花見スポットになりそうですね。
ゆるい登り下りを何度か繰り返しているうちに「鳶尾山」の山頂に到着しました。山頂は少し広くなっていてベンチがいくつか設置されていました。そしてお目当ての一等三角点は、周りをしっかりとコンクリートで固められ、柱石の破損を防ぐために四方を保護石により守られていました。
三角点の横には、「一等三角点 鳶尾山」についての説明看板が、愛川町の商工観光課により設置されています。
山頂の広場には「鳶尾山」を示す大きな石碑もあります。ちなみに鳶尾山は「かながわ100名山」に選定されています。
「鳶尾山」の山頂から南東方面に30分ほど進んだところにある、もう一つのピークには鳶尾山展望台があります。ちなみにこの展望台が設置されているピークの標高は213mで、一等三角点の設置されている「鳶尾山」の標高は234mとなります。ただ標高ではわずかに低いですが、展望塔の分の高さがあり周囲の木々より高いため視界が開けています。
展望台の螺旋階段を上った先にあるデッキからは、厚木市街が一望でき眺めがとても良く夜景も期待できそうですね。天気が良いと相模湾や東京都心まで見渡すことができます。ただし富士山については、丹沢山塊の影になってしまい見ることはできませんが、大山の美しいシルエットを見ることができます。